研究概要 |
Nanog, Sox2とOct3/4は多能性維持に重要な役割を果たしている。最近、Sox2とOct3/4が転写開始点から約150bp上流に存在するNanogのエンハンサーに協調して結合することが示された。本研究では、Sox2依存的な新規の遠位Nanogエンハンサーを同定した。この遠位エンハンサーはマウスとラットで保存されているがヒトでは保存されていない。Nanogの転写はSox2欠損マウス胚で著しく抑制されている。しかし、繊維芽細胞にSox2とOct3/4を強制発現してもNanogの発現を誘導することはできない。このSox2とOct3/4を強制発現している繊維芽細胞では、 NanogまたはSox2とOct3/4の標的因子であるFgf4のエンハンサーにSox2とOct3/4は結合できなかった。分化細胞では、これらのエンハンサーのCpGジヌクレオチドは部分的にメチル化されている。NanogエンハンサーのヒストンH3は分化細胞では脱アセチル化している。Sox2とOct3/4を強制発現している繊維芽細胞を5-aza-deoxycytidineとtrichostatin Aで処理すると、Sox2とOct3/4はFgf4エンハンサーに結合できるようになり転写が活性化するがNanogエンハンサーには結合できない。これらのデータはマウスES細胞ではSox2とOct3/4が近位,遠位の両エンハンサーによりNanogの発現を制御しているが、分化細胞ではエピジェネティクや他のメカニズム(Klf4, Sall4, NuRD等の因子)により厳密に制御されている
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