研究概要 |
H18年度の研究で有用性を明らかにした高解像度熱融解曲線法によるepidermal growth factor receptor(EGFR)の変異検出の有用性を生検や細胞診材料などの微小検体での精度を確認する目的で,術前生検・細胞診を施行された52例を対象に術前の高解像度熱融解曲線法と術前材料のDirect sequenceによるEGFR変異同定能を前向き検討を行い,術前検体における高解像度熱融解曲線法と手術材料におけるDirect sequenceでのEGFR変異一致率は83.3%,特異性は100%で本法の有用性を証明した。 次いで,ゲフィチニブ投与207例の生検・細胞診材料を高解像度熱融解曲線法を用いて,EGFR変異解析を行ったところ,41%の症例にEGFR変異を認めた。EGFR変異群と野生型群ではゲフィチニブに対する治療反応性はそれぞれ78%と8%,平均無増悪期間はそれぞれ9.2ヶ月と1.6ヶ月,平均生存期間はそれぞれ21.7ヶ月と8.7ヶ月で有意にEGFR変異群にゲフィチニブの治療効果が認められ,治療予測因子としてEGFR変異が重要でまた,微小検体における高解像度熱融解曲線法を用いたEGFR変異解析が治療効果予測因子として有用あることを証明できた。 免疫組織学的にゲフィチニブの治療予測因子を同定する目的で術後再発を来してゲフィチニブ投与を受けた62例で,EGFRのリン酸化部位である1068を認識するp1068,1173を認識するp1173,EGFR下流のシグナル伝達分子であるpAktに対する一次抗体を使用し,解析を行った。3種の抗体とも遺伝子変異と有意な相関が認められたが,治療効果とはp1173のみが有意な相関を示し有用なマーカーである可能性を証明できた。 以上,本年度は高解像度熱融解曲線法が生検などの微小検体でもEGFR変異解析に有用な手法であることが証明でき,本法を用いたゲフィチニブ投与群の解析でEGFR変異が治療予測因子として重要であることも証明できた。また,免疫組織学的にEGFRリン酸化抗体p1173がEGFR変異,治療効果と有意に相関することを証明できた。
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