研究課題
若手研究(B)
感染症に対するIL-17の関与に関しては、肺におけるKlebsiella感染において早期の生体防御を担っていることが報告されている。一方、関節リウマチや気管支喘息などの慢性炎症疾患に対してIL-17が増悪化因子であることも報告されており、このことは、発現の時間的および空間的な相違によりIL-17の生体内での役割が大きく異なることを示唆するものである。しかし、IL-17による免疫応答誘導制御メカニズムは未だ不明であり、また、IL-17の感染症に対する生体防御の意義も不明瞭な点が多い。特に、結核菌を含む細胞内寄生性細菌の感染症におけるIL-17の関与はほとんど解折されていない。そこで今回、Mycobacterium bovis Bacillus Calmette-Guerin(BCG)感染モデルを用いて、細胞内寄生性細菌感染に対する感染防御おけるIL-17の役割の検討を行った。方法としては、M. bovis BCGをC57BL/6マウスに経気道感染させ、経時的に肺組織のIL-17ならびにIL-17誘導に関与するサイトカインの発現をRT-PCR法にて検討した。さらにIL-17産生細胞を同定するため、BCG感染させたマウス脾細胞の各細胞分画のIL-17発現をRT-PCR法および細胞内サイトカイン染色法で調べた。また、IL-17産生誘導へのIL-23の関与を検討するために、IL-12/23p40欠損マウスにBCGを経気道感染させ、肺組織のIL-17発現を調べた。IL-17の感染防御への関与は、IL-17欠損マウスにおけるBCG感染後のIFN-γ産生能および肺組織の病変形成を指標として検討した。BCG経気道感染後の肺では、IL-17の発現が1日目より検出され、3〜5日目に最も強く認められた。IL-23p19も感染1日目で一過性に強く発現され、またBCG感染後のIL-17発現が、IL-12/23p40欠損マウスで顕著に抑制されたことから、BCG感染においてIL-23がIL-17産生を誘導する上流因子であることが明らかになった。一方、CD4^-CD8^-の表面形質を示す細胞分画で強いIL-17の発現が認められ、それはTCR Cδ欠損マウスで顕著に低減したことから、感染早期のIL-17産生T細胞は主にγδ型T細胞であることが示唆された。さらに、BCG感染IL-17欠損マウスにおいて肺浸潤T細胞のマイコバクテリア抗原特異的IFN-γ産生能が対照群に比べ低いこと、遅延型過敏反応も低下していること、肺病変部へのリンパ球浸潤が弱いことなどから、IL-17が感染防御獲得免疫の誘導に強く関与していることが示唆された。未だ、結核菌を含む細胞内寄生性細菌の感染症におけるIL-17の関与する詳細な生体防御メカニズムは明瞭になっていないが、これまでの情報を熟考すると、IL-17が早期の炎症反応誘導のみならず、獲得免疫誘導の増強に重要な役割を担っていると考えている。
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