研究概要 |
HIV-1 LTRの転写にNAF1が与える影響を調べてみたところ、LTRの転写をNAF1は抑制することが明らかとなった。さらに抑制能に関与するドメインを調べるために変異体を作製して調べたところ、コイルドコイルの2番目と4番目にそのようなドメインがあることが明らかとなった。これらのドメインはHIV-1 nefとの結合性も有しており、LTRの抑制とどのように関連するのか興味深い。 また、NAF1を強制発現させた細胞へのシングルラウンド感染系に、リアルタイムPCR法を用いてreverse transcription, integrationの各ステップがNAF-1によって影響を受けるかどうか検討を行ったところ、NAF-1はreverse transcription効率に影響を与えないが、integration効率を低下させることが明らかとなった。さらにNAF-1は2LTR DNAの量も減少させることから、核移行のステップがNAF-1の標的である可能性が示唆された。 次に、NAF1に対するshRNA発現ベクターを作成し、NAF1をknock downした細胞(Jurkat/NAFi,293/NAFi)を樹立した。endogenous NAF1の発現レベルを確認するにはanti-NAF1抗体が必要であるが、この目的には研究代表者が作成した抗体が非常に有効であった。樹立したJurkat/NAFi,293/NAFiを用いてHIV-1の増殖に与える影響を調べたところ、意外にもシングルラウンド感染系を用いた実験では、NAF1をknock downした細胞でHIV-1の増殖抑制が観察された。どのようなメカニズムによってこのような現象が起こるのか、今後より詳細な解析が必要である。
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