研究概要 |
メモリーB細胞の研究は,ハプテン抗原の投与により誘導した脾臓メモリーB細胞を主な解析対象としてきたが,病原体感染後に誘導されるメモリーB細胞は,これと質的に異なる可能性が示唆されている。ES4004分子がメモリーB細胞機能に果たす役割を評価するため,インフルエンザウイルスに対するメモリーB細胞応答をモニターするシステムを開発した。インフルエンザウイルスの主要な表面抗原であるヘマグルチニン組換えタンパクをプローブとして,ヘマグルチニン特異的B細胞数を定量したところ,ウイルス感染後の肺においてヘマグルチニン特異的IgA陽性B細胞が出現することが明らかとなった。この細胞群には,抗体産生細胞,胚中心B細胞,メモリーB細胞が含まれ,感染後長期間にわたり持続することが判明した。さらに,肺メモリーB細胞様の細胞をscidマウスへ移入すると二次抗体産生応答が再構築されることから,二次抗原刺激に対して迅速な抗体産生分化能を有することが確認された。この肺IgA陽性メモリーB細胞の感染防御能を調べるため,細胞移入したscidマウスを致死量のインフルエンザウイルスで経鼻感染させたところ,マウス生存率の改善が認められたことから,このメモリーB細胞にはインフルエンザ再感染を防御する機能のあることが明らかとなった。現在,ES4004欠損マウスにインフルエンザウイルスを経鼻感染させ,産生されるIgA陽性メモリーB細胞数,抗体産生細胞数を経時的に調べるとともに,scidマウスへの細胞移入システムを用いることによって,メモリーB細胞の最終分化能やウイルス感染に対する感染防御能に変化が生じるか否か検討中である。
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