研究概要 |
様々な極微量生体成分の高感度・高選択的分析を可能とするエキシマー蛍光誘導体化法を生体中のポリカルボン酸計測に適用することで,有機酸代謝異常症(グルタル酸尿症やメチルマロン酸尿症,Canavan病など)を対象とした簡便・迅速なスクリーニング法開発を行った。前年度に確立した方法論を用いて,研究二年目はバリデーションデータの確認と一斉計測法の開発,実試料(対象疾病患者,対象疾病以外の患者,健常人)計測への展開を試みた。 1.前年度に構築した蛍光スペクトル解析法及びHPLC精密分析法のバリデーションデータを追跡したところ,実試料計測のために十分な感度,選択性,再現性を有していた。さらに,両分析法から得られた結果は高い相関性を有しており,分析法の信頼性が実証できた。 2.蛍光スペクトル法を改良し,最適な光学フィルターを併用することで,多検体計測のための蛍光プレートリーダー解析法を構築した。蛍光プレートリーダー法で得られた測定結果も,蛍光スペクトル法やHPLC法の結果と高い相関関係を有しており,96検体中のポリカルボン酸量を一斉に解析可能となった。 3.各種疾病患者の尿試料を対象として,蛍光プレートリーダー解析及びHPLC精密分析を行った。有機酸代謝異常症患者の尿中ポリカルボン酸量は,健常人や有機酸代謝異常症以外の疾病患者の値よりはるかに高い値を示したことより,今回開発した方法論の有効性が実証できた。従来の有機酸代謝異常症マススクリーニングには,「3分/検体」程度の測定時間が不可欠だったが,この方法では同じ時間で100倍量の検体数を対象とした迅速な一次スクリーニングに極めて有効であることが確認された。
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