研究概要 |
ビタミンEであるトコトリエノールは抗腫瘍作用を有することが報告され、そのメカニズムとして、(1)抗酸化作用(2)アポトーシス促進作用(3)細胞周期調節作用(4)血管新生抑制作用などが提案されている。慢性炎症性疾患に伴う発癌でinducible nitric oxide synthase(iNOS)が高頻度に発現しており、その産物であるNOが発癌進行に重要な役割を果たすことが指摘されている。一方、各種癌で半数以上にp53の変異が認められ、p53は最も重要な癌抑制遺伝子であるとされている。 そこで、4つのゲノタイプ、1)wild type-p53+/+, iNOS+/+,2)p53欠損型-p53-/-, iNOS+/+,3)iNOS欠損型-p53+/+, iNOS-/-,4)p53, iNOS両欠損型-p53-/-, iNOS-/-のマウス胎仔線維芽細胞を用いた実験を計画した。最初に,発癌を促進するとされるCox-2の発現におけるp53, iNOSの役割を調べ、p53はiNOSを抑制することを通してCox-2の発現を抑制することを確認した。次にこの実験系でトコトリエノールのα、β、γ、δの各アイソザイムがNO濃度を低下させ、Cox-2のタンパク発現およびその産物のプロスタグランジンE2産生を抑制することを確認した。一方、血管新生に働くvEGFの発現には変化はみられなかった。Nitrite(NO)投与にてp44のリン酸化がみられ、JNKには変化がないことから、これらの現象にはNOによるp44リン酸化の経路が関与していると考えられる。
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