研究概要 |
[目的]本研究では、日本の一般地域住民を対象とした前向きコホート研究から、自殺リスクと関連する要因を解明し、自殺予防を目指した介入方法を確立するための計画・立案を行う。本年度は、心理社会的要因、身体的要因、生活習慣、基本特性に関するデータベースを構築し、自殺リスクと関連する要因を単変量解析によって検討した。 [方法]本研究は、大崎宮城県大崎保健所管内の1市13町に居住し、平成6年8月31日時点で40〜79歳であった国民健康保険(国保)加入者全員56,294を対象としている。平成6年10月〜12月にかけて、基本特性、心理社会的要因、身体的要因、生活習慣に関する自記式アンケート調査を行い、52,029人(92.4%)から回答を得た。解析対象者は追跡開始(1995年1月)以前の死亡者及び国保からの異動者を除いた51,218名(91.0%)とした。 [結果]2001年12月末までの追跡調査を行い、110例の自殺死亡例を確認した。多変量解析の結果、独立して自殺リスクと有意に関連したのは、男性、多量飲酒者、低頻度の果物摂取、中等度以上の痛み有り者、糖尿病既往者、長睡眠時間者であった。特に、男性を対象とした検討により、(1)多量飲酒者において、自殺リスクの有意な上昇が示された。(2)飲酒量と自殺リスクとの間に直線的な量-反応関係が示された。(3)少量飲酒者において、自殺リスクが上昇する傾向(20%リスク上昇)が示された。(4)追跡開始時点から1年以内の早期死亡例を除外した時、70%9のリスク上昇が示された。今回、精神症状と密接に関連する生活習慣要因(多量飲酒、睡眠時間)、身体的要因(痛み、糖尿病既往)が自殺リスク上昇と関連した。また、うつ病が自殺リスクを高める重要な要因であることも鑑み、今後、精神面を含めた自殺予防介入方法の確立が喫緊の課題である。
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