研究概要 |
公衆衛生対策上高い関心を集めている自殺予防に対処可能かつ有効な方策が求められている。住民に理解される自殺予防対策では、一次予防とハイリスク対策の両面が必要である。自殺と抑うつには重大な喪失体験をもたらすライフイベントや、社会的ストレス因子が背景として強く関与している。 秋田県S地区において、30〜74歳の住民を対象に質問紙調査を実施した。4645人に配布し4267人から回答を得た(有効回収数3981人85.7%)。年齢は平均50,9歳(標準偏差10.8)、男性46.9%、女性53.1%であった。抑うつ割合は13.7%であった。 今回の調査協力者のうち住所氏名記入者の住所および氏名に基づき前回調査とのリンケージを行った。調査方法については秋田大学医学部倫理委員会の承認を得た。調査時に調査方法の説明と共に調査票にリンケージについての同意の項目を設定した。 リンケージできた対象者は1141人であった。前回調査時の年齢は平均51,5歳(10.3)、男性46.7%、女性53,3%であった。前回調査時の抑うつ割合は16.8%、今回の抑うつ割合は15.3%であった。2回の得点分布は強く正の相関(r_<ps>=0.68)し、得点変化は負の相関(r_<ps>=-0.40)が見られた。前回調査以降のライフイベントに「とても悪いこと」があったとの回答者では、前回調査の抑うつ割合は20.1%、今回は28.1%であった。また「とてもよいこと」があった人での前回調査の抑うつ割合は5.6%、今回は10.3%であった。抑うつ状態の変化について前回調査時に抑うつ状態でなかった人を対象とした分析では、「とてもよいこと」があった人の3.3%、「とても悪いこと」があった人の10.9%が抑うつ状態と評価された。その他、地域住民の抑うつ状態に関連する社会的ストレス要因について検証した。
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