研究概要 |
<平成19年度の成果> 本研究(全体で3年間)のうち、2年目にあたる平成19年度の研究計画は、対象学生における検査施行後の累積結核発生者数(率)、予防内服者数(率)、費用*(累積予防内服費・QuantiFERON-TB-2G検査費用など)を算出し、当学における過去の(ツベルクリン反応のみによる)対応方法での同発生数・内服者数(率)・費用(累積予防内服費など)との比較検討を行う、ことであった。その成果を下記表に示す。 単位:千円 平成18年度学生(207人)平成17年度学生(402人) 1.検査陽性者数または強陽性者数:3 94 2.予防内服者数(実数):0 2 3.結核発病者総数 0 0 4.QFT実施費用:891.135(207*4.305)0 5.ツ反実施費用:(260.82(207*1.260))506.52(207*1.260) 6.検診費用合計:**891.135 506.52 7.上記1.に対して単純に全例予防内服を施した場合の医療費総計:266.7 8355.7 8.上記2.に対する予防内服費用:0 177.8 9.費用合計(上記6.+7.)1157.8/207人 8862.2/402人(5.6/人)(22.0/人)(上記6.+8.)891.1 684.3(4.3/人)(1.7/人) 註:ツ反強陽性の定義:狭義の強陽性に加えて、発赤>=40mm以上。予防内服費用の内訳:診察料(初診・再診料;月1回ごと)、検査料(肝機能など;月1回ごと)、イソニアジド費用(計180日分)を含む。**QFTのみを施行した場合。 <結果の解釈> 日本結核病学会の「今後のツベルクリン反応検査の暫定的技術的基準」(平成18年5月)によれば、結核患者との接触歴がなくBCG接種歴のあるケースでは、「発赤40mm以上」が措置のための基準となっている。それに該当するのは、平成17年度では402人中94人が該当し、QFTの陽性者数(3人;平成18年度)と比べて極めて多く、単純にこれら学生全員に予防内服を行ったとすれば全体で莫大な費用がかかることがわかる(22,000円/人)。ただし実際には、QFT検査に切り替えた場合、予防内服者の減少は2例のみであり、費用面では4,300-1,700円=2,600円/人の医療費を余分に要することが分かった。なおどちらのコホートも結核発病者は同じで「0」であり、QFTの導入が検査法の精度向上に寄与した可能性はあると考えた。 上記から、ツ反よりもQFT検査を用いた結核検診の方が無駄な予防内服を削減しうるという意味においては有効と考えたが、費用対効果上未だ満足できるとはいえず、今後さらなる検討を要すると考えた。
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