研究概要 |
本研究は,都市域内の冷房排熱に代表される人間活動と気象環境を包括的に扱った数値モデルを,近年増加する熱中症の発症リスクの予報に利用することを目的として,熱中症リスクの実地観測との比較によって熱中症予報システムの実用ポテンシャルを確認した。 2007年7月下旬から8月上旬におかけて,大阪市街地を対象にして,熱中症リスクの指標であるWBGTを連続観測した.前年度は中規模都市(岡山市)を対象に同様の観測を実施したが,本年度は比較のために大規模都市(大阪市)において,オフィス街,繁華街,住宅地,公園を選んでWBGTを観測したは,WBGTが28℃を超えるような,日本体育協会や生気象学会から公表されている評価ランク「厳重警戒」に相当する日がほとんどで,特に住宅地では31℃(評価ランク「危険,運動は原則中止」)を超える日が多く見られた.このように,人間活動が活発な街中よりも住宅地のほうが日本のWBGTが高くなる傾向は,昨年の岡山市での観測結果と同様の特徴であった. 一方,都市屋外空間の微気象場を再現する都市街区気象モデル(CMBEM:産業技術総合研究所が開発)と,局地気象を再現するメソスケール気象モデル(WRF:アメリカ国立大気研究センターなどが開発)を結合させて,熱中症予報システムを構築した.熱中症の評価指標には,前述のWBGTを採用した.最初に,大阪管区気象台で観測された気象要素を使って数値モデルの再現性を検討したところ,良好な結果を得るひとができた.その後,2006年夏季の岡山市での観測,2007年夏季の大阪市での観測結果と予報システムによる計算結果の比較をおこなった.いくつか改良点は残るものの,定量的にもある程度の再現性を確認することができた.
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