研究概要 |
2007年に大阪府内の性病科,泌尿器科,婦人科を定点として,HIV感染に対してリスクが高い行動をとっていると思われる者の検体1966件についてHIVの抗体検査を行った。その結果23件(1.17%)で陽性を確認した。陽性のものについて感染者の血清よりRNAを抽出後,RT-PCRを行い,HIVのenv-C2V3領域とpol領域を増幅し,その後シークエンシングを行った。その結果,日本人男性15例と外国人男性1例はサブタイプBであり,日本人女性1例はサブタイプCであることが分かった。 系統樹解析の結果,2007年に検出された陽性検体は2006年以前の検体と非常に近縁で由来が同じであると考えられるケースが存在した。しかし,流行拡大がおこっているウイルスに共通した遺伝的特徴を見いだす事はできなかった。 pol領域について解析すると逆転写酵素阻害剤の薬剤耐性関連変異箇所である215番目にT215Cをもつものが存在した。T215Y/Fのリバータントと考えられるT215Xは近年増加傾向にあり,当研究所でも2006年から2007年に行われた確認検査で陽性が判明した5名およびフォローアップを行っている薬剤未治療者2名にも認められ,env-C2V3領域,pol領域においてもほぼ同じところにクラスタリングされた例がある。 20歳代から40歳代の日本人男性において,HIVの流行はゲイコミュニティーにおいて拡大しており,感染初期で発見されるケースも増えてきている。また,感染初期でみつかった検体のウイルスは遺伝的にみて由来の異なったものであり,HIVの感染拡大は調査地域内に複数存在すると思われるコミュニティーそれぞれでおこっているものと考えられた。
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