研究概要 |
近年、MDMA等錠剤型乱用薬物の押収が急増しており、その乱用が社会問題となっている。これら錠剤は、錠剤毎に成分や含有量が異なるため、摂取した際の体内動態の予測は難しく、薬物相互作用によって予期せぬ体内動態変化が起こり、毒性が増強される危険性がある。そこで、錠剤中のいくっかの成分をラットに単独投与または併用投与し、尿及び胆汁中に排泄される未変化体及び代謝物の時間的、量的変化を測定することで、薬物相互作用によって排泄にどのような影響を及ぼすかを検討する。また、ヒト由来の酵素を用いたin vitro代謝実験から、どの酵素が代謝過程における薬物相互作用に関与するかを検討する。 平成19年度は、ヒト由来の各種代謝酵素にMDMA、メタンフェタミン(MA)、ケタミン等を一定時間反応させ、経時的に生成する代謝物をLC/MSにより定性・定量することで、代謝過程での薬物間相互作用を検討した。ヒト肝ミクロソーム中、S-adenosylmethionine存在下、MDMAから4-hydroxy-3-methoxy MA及び3,4-methylenedioxyamphetamine、MAからρ-hydroxy MA及びamphetamineが生成し、主にCYP2D6により代謝を受けることが明らかとなった。また、ヒト由来CYP2D6リンパ発現系にMDMAとMAを同時に添加した場合、互いの代謝物の生成速度が低下し、競合的に阻害することが明らかとなった。これらの結果から、排泄過程のみではなく、代謝過程においても相互作用することが示唆された。ラットやヒト由来代謝酵素での実験と同様に、ヒトがこれらの薬物を併用した場合、代謝及び排泄過程で相互作用する可能性が示唆された。
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