研究概要 |
申請者を含む研究チームが既に作成したp53ミスセンス変異ライブラリー(KatoS,OtsukaKら、PNAS100,8424-8429,2003)には、1塩基置換により生じうる全ての1アミノ酸置換型変異p53(2314種類)が網羅されている。今回、申請者はこのライブラリーを用いてTP53cDNA上にミスセンス変異を持つp53発現プラスミドを約1000種類抽出した。このプラスミドのTP53cDNAのコドン72はプロリン(P)である。このプラスミドからTP53cDNA断片をPCR法により増幅し、コドン72がアルギニン(R)であるp53発現ベクターとともに出芽酵母内に導入し、相同組換え法によりコドン72がRに置換された変異p53発現ベクターを構築した。また酵母内にはWAF1遺伝子由来のp53結合配列を持つEGFPレポータープラスミドも導入されており、その発現を測定することにより転写活性化能を定量的に評価できるシステムとなっている。960種類の変異p53発現ベクターの構築を試みたが、実際に作成できたものは886種類(=92.3%)であった。コドン72がRである変異p53とPである変異p53とでその転写活性化能を定量的に比較した。結果、886変異体のうち、コドン72がRである場合とPである場合に、転写活性化能の有意差(p<0.001)を認めた変異体は10種類あった。その他の大多数のp53ミスセンス変異体においてはその転写活性化能はコドン72の遺伝子多型に大きな影響を受けなかった。今回得られた結果は、TP53にある変異が生じた場合にのみ、p53の転写活性化能が遺伝子多型により影響を受けることを実験的に示しており、コドン72遺伝子多型についての重要な知見である。今後。プラスミド構築時のPCRエラーの頻度を解析し、更に精度の高いデータに仕上げて発表する予定である。
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