研究概要 |
近年、我々は、成熟脂肪細胞から多能性を有する前駆細胞(DFAT)を効率的に得る方法を確立した。本研究では、DFATが肝細胞へ分化する可能性および肝臓再生に寄与する可能性について検討した。中胚葉系である脂肪細胞が胚葉を飛び越えて内胚葉である肝細胞へと分化転換することは学術的にも非常に意義が高く、また本研究における分化転換系の確立は肝不全患者に対する肝再生治療の有効な細胞治療法となる可能性を示すことになる。 前年度、我々はヒト脂肪細胞から調整されたDFAT-Hが生体外においてアルブミン産生細胞への分化転換することを示した。 本年度、さらに肝機能障害に対してDFATの移植が有効な治療法となるかを調べる目的で、四塩化炭素(CCl4)を腹腔内に注射し作成した急性肝機能障害ラットにGFPラット皮下脂肪組織から調製したDFATを尾静脈より移植した。その後経時的に血清を採取しGOT,GPT,LDHを測定した。またCCl4投与3日後に肝臓を摘出し、免疫組織化学的検討を行い、組織修復能を検討した。その結果、DFATを移植したラットでは、生理食塩水を投与したコントロールラットに比較して、GOT,GPTの早期からの低下が認められた。また組織学的にはDFATを移植したラットでは、生理食塩水を投与したコントロールラットに比較して、空砲壊死肝細胞および間質炎症性病変の減少が認められた。これらの結果より、脱分化脂肪細胞移植療法の急性肝障害ラットに対する有用性が示唆された。
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