研究概要 |
動脈中膜石灰化,健常者では加齢とともに見られるものであるが,糖尿病例や末期腎不全例で,より高度に認められる。最近血管石灰化か心血管系疾患や生命予後に大きく関与することが数多く報告されている。主研究者らは,その原因蛋白としてKlotho蛋白に注目し,糖尿病性腎症における腎臓におけるKlotho蛋白の動態について検討した。ヒト腎生検標本を用いた検討では,糖尿病性腎症例では,同程度の腎機能を有するIgA腎症例に比して有意にKlotho発現が低下していた。しかし,今回対象としたIgA腎症例と糖尿病性腎症例での尿細管間質障害の程度を免疫組織学的に比較検討したが,有意な差は認められなかった。そこで,糖尿病モデルマウス(STZマウス)を作成,腎臓におけるKlotho発現の程度を経時的に検討した。また,腎局所での低酸素状態を検討するためpimonidazoleを投与した。明らかな尿細管間質病変が出現しない段階で,尿細管上皮細胞はpimonidazole陽性となり,Klotho発現が低下することが明らかとした。また,尿細管上皮細胞を低酸素下で培養するとKlotho発現が低下することも明らかとし,糖尿病性腎症での早期の段階でKlotho発現の低下は低酸素が関与している可能性を見出した。一方で,Klotho蛋白と血清FGF23蛋白は,カルシウム・リン代謝に重要な因子として報告されている。現在,我々は,糖尿病性腎症例で,血清カルシウム・リン代謝異常が惹起される前,早期の段階で,腎でのKlotho蛋白の低下,FGF23蛋白の上昇が誘導されていることを見出した。これらの蛋白の動態が,血管の石灰化病変にどのような機序で関与していくのかを検討中である。
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