研究概要 |
1 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態解明 生後6日目SDラットの脊髄腰膨大から採取した脊髄器官培養をプロテアソーム阻害剤に暴露し,運動ニューロンが比較的選択的に障害されるALSモデル培養を用いて,アポトーシスとの関連を検討した.本モデル下ではグリア細胞はCaspase9,3の活性化と核の分断を伴う古典的なアポトーシスの形体をとったのに対し,運動ニューロンの細胞死ではこれらのアポトーシス像を捉えることができず,caspase阻害剤による細胞死回避の効果も見られなかった.従来よりALSなどの神経変性疾患の細胞死がアポトーシスであるかは議論されてきたが,プロテアソーム障害が引き金となり発症する神経細胞死にはアポトーシス以外の経路をとる細胞死が関与している可能性がある. 2 骨髄間質細胞(BMSCs)による細胞療法のin vitroモデル 脊髄スライス培養を用いて,BMSCsによる細胞移植療法のin vitroモデルを考案した.培養皿底部にBMSCsを先行して培養した後,約1cm程度上方に置かれた膜上で脊髄器官培養を行い,両者を同時に培養した.脊髄器官培養は二週間程度するとグリオーシスが見られるが,本法ではグリオーシスが抑制された.また,白質周辺部に多数の分裂細胞が出現し,これらの一部は神経幹細胞のマーカーを発現していた.外傷やALSなどの疾患で内因性神経幹細胞が活性化することが知られているが,脊髄の環境がニューロンへの分化を抑制し,グリアへ誘導していると考えられている.今回の結果から,BMSCsは脊髄内の環境を再生に有利な方向へ変化させている可能性が示唆された.
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