研究概要 |
私は以前、血小板に発現しているCキナーゼのアイソフォームとしてPKC alpha, beta, delta, thetaの存在を確認し、さらにPKC阻害剤であるbis-indolylmaleimide 1と血小板を反応させるごとによって血小板機能、フィブリノーゲンとの結合が抑制されることを確認した。以上より、PKC alphaあるいはPKC betaが血小板活性化機構の中心的な機能を担っているインテグリンGPIIb-IIIaに重要な役割を果たしていることは明らかであり、さらには、血小板への分化過程にも重要な関わりを有していることが強く示唆された。そこで、マウスPKC alpha、PKC betaのsiRNAをそれぞれ2種類作製し、マウスNIH3T3細胞に導入して90から95%のノックダウン効果を有することを確認した。その後、上記のsiRNAをGPIIb-IIIaが発現じているCHO細胞に導入して、GPIIb-IIIaの活性がどう変化するかを検討した。また、同じsiRNAを導入したレンチウイルスベクターを作製し、マウスES細胞において感染させ、その後、EPOを加える条件下で赤芽球系細胞に、あるいはTPOを加える条件下で巨核球系細胞に分化させてコントロールと比較して検討した。 次いで、私は、哺乳類細胞に種々の遺伝子組み換えGPIIb-IIIa蛋白を発現させてこの蛋白の構造と機能の相関について検討した。今年度においては、血小板のGPIIb-IIIaのうち、GPIIIa蛋白の細胞内ドメインにある特定の2つのアミノ酸がGPIIb-IIIaの活性化を抑制していることを見出した。このアミノ酸領域は、インテグリン活性化細胞内蛋白であるTalinの作用をsiRNAを用いて抑制することによって、GPIIb-IIIaの活牲化を制御していることがわかり、さらにその抑制機能を有するアミノ酸はGPIIIa細胞内ドメインの膜近位領域と膜遠位領域こそれぞれ存在しており、この両領域の協調作用によってtalinを介したGPIIb-IIIaインテグリンの活性化が抑制されていることを明らかにした。
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