研究概要 |
本年度は自己免疫疾患的側面の骨髄低形成と腫瘍的側面のクローン性造血という両者を有する骨髄不全症候群において細胞傷害性T細胞(CTL)と制御性T細胞(Treg)が如何に関与して骨髄不全症候群の病態を形成するかを検討した。まず、発作性夜間血色素尿症(PNH)におけるCTLの役割についての検討においてはウイルムス腫瘍遺伝子(WT1)ペプチド特異的HLAクラスI拘束性CTLが増加しており、しかもその攻撃をPNHクローンが相対的に回避することを確認し、さらにCTLがインターフェロンガンマを産生することを見いだした。以上よりPNHにおいてはHLA拘束性WT1ペプチド特異的CTLが誘導され、その攻撃に対してPNHクローンが相対的に残存し拡大するという腫瘍的側面とともに、自己免疫疾患的側面による造血障害機序の一端を示した(Ikeda K et al., Exp Helnatol, in press)。次に、再生不良性貧血(AA)、PNHおよび骨髄異形成症候群(MDS)におけるTregとCTLの関連について検討した。AAにおいてはTreg数・比率および機能の低下を認め、自己反応性CTL増加による骨髄障害の背景になっている可能性が示唆された。逆にMDSにおいてはTreg数・比率および機能の増加傾向を認め、自己反応性CTL減少による異常クローン増加の背景になっている可能性が示唆された(Akutsu K et al., American Society of Hematology,2006)。今後はさらに樹状細胞など免疫制御に関与する他の細胞との関係も含めて詳細に検討していく予定である。
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