研究概要 |
造血幹細胞の未分化性・多分化能の維持はニッチという微小環境によって制御されており,骨髄内では骨梁領域の骨芽細胞が様々な機能を担っていると考えられている。造血幹細胞は胎生期の肝臓や脾臓においては髄外造血し,また成体においても腫瘍・感染症などでも脾臓等での造血が開始される事が明らかとなっているが,骨髄以外での造血幹細胞の未分化性の維持機構については不明な点が多い。そこで,本研究では髄外造血時のニッチ機構を明らかにする事を目的とした。 まず,我々は大理石病モデルマウスで,恒常的に髄外造血を示すc-Fosノックアウトマウスにおける造血幹細胞の局在を調べた結果,Tie2,SCL/tal1,Sca-1陽性の造血幹細胞の一部が巨核球様細胞(MLCs;Megakaryocyte-like cells)近辺に存在している事が明らかとなった。また,致死性X線照射後の骨髄移植による一過性の脾臓での造血(CFU-S)においても同様の現象が認められた。CFU-S8脾臓では興味深い事にMLCが多数クラスターを形成して存在していることが明らかとなった。MLCsは通常のCD41陽性の巨核球とは異なり,骨髄におけるニッチ分子の一つであるN-cadherinをはじめ,β-Catenin,Spp1,Jagged-1,SDF-1αを高発現している細胞である事が明らかとなり,脾臓での造血維持において重要な役割を果たす事が示唆された。また,Ly5.1と5.2を用いた移植実験から,これらのMLCの70-80%が移植細胞由来である事が明らかとなった。また,同細胞をフローサイトメトリーによって分取した後,造血幹細胞(KSL細胞;Kit+,Scal+,Lineage negative)と共培養しや結果,KSL細胞を有意に増加する事が明らかとなった。
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