研究概要 |
昨年度に引き続き,関節炎におけるスフィンゴシンキナーゼ1(Sphk1)の働きを検討するため,C57BL/6及び129/svの背景を持つSphk1KOマウス(JBiolChem.2003;279:52487)に対しDBA/1Jマウスを6世代backcrossし,F6世代のSphk1+/-の雄及び雌を交配し生まれた野生型(WT)及びKOマウス及びその子孫を実験に用いた。 昨年度はコラーゲン関節炎モデルを用い,関節炎の発生頻度や時期,関節炎スコアを検討したがSphk1WTマウス及びKOマウスにおいて差異を認めなかった。また組織学的な検討でも明らかな差異を認めなかった。 本年度は上記WT(n=7)及びKO(n=8)マウスを用いモノクローナル抗体カクテル(Chondrex)を用いた関節炎モデルを作成した。モノクローナル抗体カクテルを第1日,LPSを第4日に接種することで関節炎を誘導し,第15日まで観察,関節炎の程度を検討後屠殺した。屠殺後,関節炎組織をホルマリン固定しH&E染色で組織の状態を評価比較した。関節炎の程度は関節スコアで重症度を評価したがSphk1WTマウス及びKOマウスにおいて差異を認めずともに激しい関節炎を発症した。また関節炎の発症時期においてもともに第6日より発症し第13日にはピークとなり,発症頻度も全例に発症し差異を認めなかった。また組織学的な検討でもSphk1WTマウス及びKOマウスにおいて何れもパンヌスの形成と軟骨の破壊を認め激しい滑膜炎の所見を呈した。 Sphk1WTマウス及びKOマウスにおいて関節炎の発症の程度,時期,頻度いずれにおいても差異を認めないという結果は,S1Pの炎症への関与という観点から見るとSphk1KOマウスにおけるSphk2による代償機転の関与を示唆すると考えられたが,この点については今後の検討が必要である。
|