研究概要 |
2006年度に行ったFGF-2の免疫組織化学で、我々は異形成病変部に出現するバルーン細胞(BCs)がグリア系細胞由来する可能性を見出した。2007年度は、ヒト胎児剖検脳(N=5;妊娠12、16、19、20、21週)における追加検討より、胎児脳においてFGF-2が大脳皮質に弱く発現していることを確認した。これらの結果は既知の報告とも合致しており、異形成部に出現するBCsおよび大型異形成神経細胞(GNs)におけるFGF-2の発現はこれらの細胞の未熟性を反映したものと考えた。脳内在性DセリンはNMDA受容体のコ・アゴニストとしてグリシン調節部位に選択的に作用し、グルタミン酸興奮毒性の発現を調節する因子であり(Danysz W, et. al. 1998)、脳組織ではserine racemaseの活性が神経細胞だけなくグリア系細胞に多く局在する(Schell, et. al.1997)。前年度の結果を踏まえ、グリア系細胞由来と想定されるBCsのてんかん原性獲得における生物学的意義を解明するために、胎児脳(N=2;妊娠12、20週)と皮質形成異常病変(N=3)を用いたserine racemase(SR)の発現を検討した(Serine racemase H-150;Santa Cruz)。結果、胎児脳では大脳皮質において弱い発現がみられた。また、異形成病変部では、反応性アストロサイトやAlzhaimer II型グリアおよびBCsで強い発現がみられ、GNsにも様々な発現を認めた。オリゴデンドログリアや比較的正常部位にみられる神経細胞に発現は認められなかった。胎児脳との結果とあわせGNsやBCsのserine recemaseの発現はこれらの未熟性を反映すると考えた。さらに、比較的正常部位の神経細胞と異形成病原部との比較からは、異形成細胞におけるグルタミン酸興奮性の亢進の関与が示唆された。
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