研究概要 |
血球貪食性リンパ組織球症(HLH)には1次性と2次性があり,1次性である家族性HLH(FHL)は予後不良である。FHLの責任遺伝子の一つにパーフォリン異常があり,本邦でインフォームドコンセントが得られたHLH症例を対象としてパーフォリン異常の解析を行った。解析方法はフローサイトメトリーにてパーフォリン蛋白発現を検査し,発現異常症例についてはDNAを抽出し,パーフォリン遺伝子解析を行った。集積したパーフォリン異常19症例から遺伝子型・表現型,予後を解析したところ,予後不良因子としてHLH発症年齢1歳以下,パーフォリン遺伝子non-missense(nonsense,deletion,hlsertion)異常を両アリルに有する遺伝子型があげられた。また同種造血幹細胞移植が唯一の治療法であるが,診断後早期の幹細胞移植にもかかわらず,移植後早期のHLH再燃や移植関連合併症による死亡率の高いことも予後不良の一因であった。予後改善のためにも,今後も引き続きFHL症例を集積し,遺伝子型・表現型を解析し,最も適した治療方針を確立するとともに,移植時期,移植源の選択や前処置を含めた移植方法についても検討すべき点として残されている。 パーフォリン遺伝子異常は,日本だけでなく民族特有の遺伝子異常が報告されている。韓国,台湾,香港,マレーシア等アジア諸国の医療機関と連携を取りながら,FHL疑い症例のパーフォリン遺伝子解析を行ったところ,現在までにパーフォリン異常症例は1例のみ認められたが,更なる症例の集積が必要である。今後もアジア各国におけるFHL疑い症例を解析し確実に診断することにより,治療成績の改善へと結びつくことが期待できる。
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