研究概要 |
平成18年度;CARSにて自閉症と診断された患者のうち,文書にて本人もしくは家族から同意を得られた患者について解析を行った。まず,血中セロトニン値とビオプテリン値を計測し,次に,ビオプテリン合成の律速酵素であるGTPサイクロヒドロラーゼIについてその遺伝子であるGCH1の解析を行った。遺伝子解析は患者有核細胞より抽出したゲノムDNAを用いて行った。GCH1遺伝子の各エクソン周辺のイントロンにプライマーを設定し,poly chain reaction 法を用いて増幅した。増幅した遺伝子断片をダイレクトシークエンス法にてその塩基配列を決定し,遺伝子変異の有無について検討した。 遺伝子情報の取り扱いについては,ガイドラインに即し,大阪市立大学大学院医学研究科倫理委員会の承認を得て行った。 平成18年度に解析を行った患者は5人で,古典的自閉症2例,PDD-NOS2例,アスペルガー障害1例であった。全症例で自閉症の家族歴は認められず,頭部MRI検査,脳波検査,アミノ酸分析で異常は認めなかった。古典的自閉症の1例では家族の希望もあり染色体検査を行ったがfragile X症候群は認めなかった。 血中セロトニン値は全例で正常値であった。血漿プテリジン分析において,血漿ネオプテリン値は13.75±357nM,血漿ビオプテリン値は12.05±4.57nMと平均値はいずれも正常範囲であったが,血漿ビオプテリン値では5.37nM,8.84nMと低値を認めた症例もあった。全症例についてGCH1遺伝子の解析を行ったが解析を行った範囲で変異は認められなかった。 平成19年度には,Dopa-responsive Dystonia患者におけるビオプテリン測定もおこなった。 その結果,髄液中ネオプテリン値とビオプテリン値は低下しており,血漿中ネオプテリン値も低下していた。 何人かは病初期には正常であったが,その後低下しており,病態生理の解明にはさらなる研究が必要と考えられた。
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