研究概要 |
今回の研究では,新生児の脳性麻痺の原因となる最多の要素としての脳室周囲白質軟化症(PVL)について治療的介入への基礎的検討を行った。研究代表者が作成した日齢3(P3)ラットを用いた右総頸動脈結紮と6%酸素環境60分負荷にて低酸素虚血(H-I)とした大脳白質障害モデル(PVL実験動物モデル)を用いて,1.エリスロポイエチン(EPO)をあらかじめ投与した場合にどのくらいの量で2日後(P5)の脳の組織学的障害が軽減されるかを評価するため,薄切切片を作成し,免疫組織化学的染色,ヘマトキシリンエオジン染色を用いた組織標本を作製し,四段階の障害スケールを用いて評価する。2.P3にて低酸素虚血負荷後,長期間(8週齢)生存させ運動障害,認知障害の程度を評価し,EPOを使用した場合にどのように改善がみられたかの評価を行った。1.に関してはEPOを1U/kg・30000U/kgの投与量を設定して,虚血負荷後105分に腹腔内投与を行い,15分後に低酸素負荷を行った。その結果,50U/kg,100U/kg投与した場合に組織障害の軽減の効果がみられた。以前の研究ではEPOは低容量では血液脳関門(BBB)を通過しないと考えられていたため,大量投与の必要性があるとされていたが,今回の研究ではH-Iによって血管透過性が変化してEPOが比較的低容量で効果を示したと考えられた。2.に関しては,H-I群,H-I+EPO100U/kg投与群,コントロール群に対して8週齢時にSMARTビデオ画像行動解析装置を用いてオープンフィールドテストなどの評価方法を用いて,運動麻痺の程度の評価を行った。H-I群とコントロール群の比較では明らかな運動麻痺がみられたが,H-I群とH-I+EPO 100U/kg投与群の比較では運動麻痺の改善の結果が認められなかった。現在,評価方法の再検討,例数の増加を行い,検討を継続している。
|