研究概要 |
我々は,ホスホリパーゼDI(PLDI)が色素細胞の重要な機能であるメラニン色素生合成(メラノジェネシス)の負の制御分子として作用する可能性を見出している。これまでに,PLDIはその下流分子のmTOR(mammalian targetof rapamycin)を介してメラニン生合成酵素の働きをmRNAレベルからネガティブに制御することを明らかにしている。しかしながら,その分子メカニズムについて不明な点が多く,更なる詳細な分子機構解析が必要である。本年度は,PLD1/mTORシグナリングによるメラノジェネシスの抑制機構を解明する事を目的として,mTORの下流で機能するメラノジェネシス制御分子の探索を行った。 mTORの選択的阻害剤であるラバマイシンは,B16メラノーマ細胞に対しメラノジェネシスを強く誘導する。ラパマイシンの添加により発現量やリン酸化状態などが変化する分子は,PLD1/mTORシグナリングのエフェクターとしてメラノジェネシスのスイッチング機構に深く関与する可能性が高い。今回,ラパマイシン処理によりリン酸化が誘導されるタンパク質のひとつとしてCREB(cAMP response element-binding protein)を見出した。CREBは、メラニン合成酵素の発現を調節するMitf(microphthalmia-associa tedtranscription factor)の転写制御を担う転写因子であり,メラノジェネシスの制御に深く関与することが知られている。すなわち,PLD1/mTORシグナリングは,CREBのリン酸化(活性化)を抑制することにより,メラニン生合成酵素の働きを転写レベルから負に制御する可能性が示唆された。
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