研究概要 |
平成19年度は,抑うつ状態にある気分障害(双極性障害および大うつ病性障害)患者の末梢白血球におけるSR蛋白質遺伝子群mRNAの発現量を検討した.さらに,寛解状態における気分障害患者や気分障害患者第一度血縁者においても同様の検討を行った. 山口大学医学部附属病院精神科神経科に入院もしくは通院中の気分障害患者78名(双極性障害37名,男性7名,女性30名,平均年齢53.2±2.3歳,大うつ病性障害41名,男性15名,女性26名,平均年齢57.3±2.2歳)および健常者28名(男性15名,女性13名,平均年齢50.0±1.8歳)を対象とした.診断には精神疾患の分類と診断(DSM-IV)の診断基準を用い,うつ状態の重症度評価にはハミルトンうつ病評価尺度(Hamilton Depression Rating Scale : HDRS)を用いた.また,本研究は山口大学倫理委員会の承認を得て行い,対象者には研究の趣旨について文書を用いて説明し,同意を得た.また採血はうつ状態と寛解状態の二時点で施行した. 気分障害患者の末梢白血球におけるSR蛋白質遺伝子群(SRp20, SRp30c, SC35, SRp40, SRp46, SRp54,SRp55, SRp75, ASF/SF2, 9G8)のmRNA発現量について検討したところ, SRp20 mRNA発現量が双極性障害患者群において健常者群より有意に高い値を示した.さらに,この発現低下は寛解状態でも認められたことから,SRp20 mRNA発現量の低下は双極性障害におけるtrait-dependentなものであることが示唆された.さらに,健常者でみられたGRβ/α発現量とSRp20mRNA量の相関が気分障害患者では認められなかった.この結果から,気分障害患者におけるSRp20を介したGRの選択的スプライシング異常が示唆された.
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