研究概要 |
本研究の目的は,医師に診断のための参考症例として類似症例を提示する診断支援システムの開発とその有用性を評価することである.平成18年度は,経過観察前後の現在と過去の各微小石灰化クラスタにおいて,6つの病変形態を定量化するアルゴリズムを確立した.そして,これらの特徴量空間における診断対象症例の最近傍症例を類似症例として選択する類似症例検索アルゴリズムを開発した.本年度は,さらに以下の研究成果が得られた. (1)微小石灰化クラスタを高精度に定量化するため,個々の石灰化陰影の領域を正確に抽出するレベルセット法に基づく抽出アルゴリズムを開発した.このアルゴリズムを実験試料に適用し特徴量を計測した結果,病理組織型間の特徴量の差が大きくなり,アルゴリズムの有効性が示された. (2)(1)で得られた12特徴量により構成された特徴量空間を類似症例検索アルゴリズムに導入した.診断対象症例と類似症例の病理組織型が一致したとき正しく類似症例が検索されたと評価した.その結果,従来のアルゴリズムより病理組織型の一致度が向上し,類似症例をさらに的確に検索できる可能性が示唆された. (3)類似症例検索に基づく診断支援システムのプロトタイプを作成した.このプロトタイプは,診断対象画像・類似症例画像の通常・拡大表示,濃度階調変換などの機能を備えている.医療現場のヒアリングにより,本プロトタイプは,ユーザインターフェイスのデザイン,操作性において十分臨床応用可能との評価が得られた. (4)北米放射線学会(RSNA)にて,25症例を対象に本診断支援システムの有用性の予備評価実験を行った.10年以上の読影経験がある放射線科医28名が実験に参加した結果,類似症例の表示により医師の鑑別精度が平均15%向上する結果が得られ,臨床的に有用となる可能性が示唆された.
|