研究概要 |
左門脈圧亢進症モデル作成のために,まず経皮経肝的に門脈にアプローチした。脾静脈をバルーンカテで閉塞しEO(液体塞栓物質)を注入して塞栓した(B-RTO)。2週後,4週後,2カ月後に血管造影(経動脈的門脈造影)にてフォローしたが,2週後から,脾静脈近傍に細かな側副路が出現し,理想的なモデルは出来なかった。2週後,4週後,2カ月後に動物を屠殺し,胃,脾臓,肝臓ならびに隣接臓器の肉眼的検討した。屠殺直前には開腹し脾静脈抹消から直接門脈造影も施行した。脾静脈近傍の細かな側副路が目立った。血液生化学検査もとくに変化は見られなかった。脾静脈を多数の金属コイルで塞栓もしたが,同様であった。脾静脈近傍に細かな側副路と胃大網静脈の発達が目立った。 門脈の血行動態は複雑特異的である。臨床でも,門脈系に閉塞等で血流障害が起これば,側副血行路が発達し,これが新たな病態を引き起こし,この病態を治療するとまた新たな側副血行路が発達するという経験をする。門脈の血行動態の変更を人為的にコントロールするのは難しいと思われた。今回のモデルをさらに理想に近づけるには,少なくともさらに胃大網静脈も塞栓する必要があると思われた。 この不完全なモデルにPSE(部分的脾動脈塞栓術)を施行したが,どの静脈の血流を測定するかで意味が変わってくるので評価は困難であった。しかし,少なくともPSEの安全性は確認できた。シンプルにPSEを施行した場合,塞栓の割合と脾静脈の血流変化との関係をみる実験系のほうが意味があったと考える。
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