研究概要 |
移植医療における超急性拒絶反応は、移植片に対して反応する既存抗体が補体を活性化し細胞障害を引き起こすと考えられている。今回、HLA抗体感作患者血清を用い、リンパ球に対する反応をフローサイトメトリー及びcomplement-dependent cytotoxicity (CDC) testにて計測した。さらに結合IgG量、IgGサブクラスと補体成分(C3b,C4d,C5b,C1q,C3d,iC3b,C5b-9)の比較検討を施行した。この結果、フローサイトメトリーによる結合IgG量とCDC testとの間に有意な相関関係はみられなかった。またC3b活性は結合IgG量、IgGサブクラスによるのではなく、血清/リンパ球の組み合わせで決定された。すべての患者において優位なIgGサブクラスはIgG1であり、HLA抗体感作患者血清に対しC3bはほぼすべての患者で陽性であり、最も鋭敏な補体成分と考えられた。免疫グロブリン(IVIG)はHLA抗体による拒絶反応における細胞障害を阻害する効果があると報告されている。前記の新たな補体活性化測定システムを用いIVIGによる細胞障害抑制効果を測定し、IVIGを用いた拒絶反応抑制メカニズムを検討した。この結果、IVIGはHLA抗体レセプターに結合しその活性を阻害するのではなく、HLA抗体により活性化された後の補体系を抑制することが示された。 当研究の結果、通常の仮説に反しCDC test、結合IgG量、IgGサブクラスは補体活性化の予測因子としては精度が低いことが示された。またHLA抗体の補体活性化を計測するために最も適したパラメータはC3bであり、精度の高い新たな移植患者選択システムとして使用可能である。IVIGはHLA抗体により活性化された補体系を抑制することが示され、免疫感作患者に対する移植医療を進歩させる可能性がある。
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