研究概要 |
昨年度の実験にひき続き腎不全ラットを用いて、腎不全の有無による、肝阻血再灌流後の血清生化学検査による肝障害の程度の変化、炎症性サイトカイン、抗炎症性サイトカインの変化、肝組織所見の変化の比較検討をおこなった。 6w-7wのWister ratを用いて、5/6nephrectomyを施行した急性腎障害モデル群とコントロール群とで、70%の肝阻血前後での両者の比較検討では、血液生化学所見において明らかな肝障害の程度差はみられなかった。また、肝阻血再灌流障害前後での肝組織では、肝再生の指標であるPCNA陽性細胞はコントロール群に比してより急性腎障害モデル群が有意に増加していた。血清サイトカイン(IL-10,TNF-α)においては、肝阻血前では両群に有意差は認められなかったが、阻血再潅流後3日目ではIL-10,TNF-αともに急性腎障害モデル群が有意に上昇していた。 以上より、急性腎障害モデル群では、肝阻血再潅流後に抗炎症サイトカイン(IL-10)および肝再生刺激因子(TNF-α)が、コントロール群よりさらに強く作用することにより、残存した肝細胞の再生を促進し肝障害を軽減しているのではないかと考えられた。 今後は、実際の肝移植を想定した急性腎障害モデル群とコントロール群での肝移植モデルを用いた肝移植前後での腎不全の有無による、個体の生存率、肝障害の程度の変化、血清サイトカインの変化などの検討を行っていきたいと考えている
|