研究概要 |
本研究の目的は胆管癌細胞における染色体異常(ゲノムDNAの増幅,欠損)をゲノムアレイを用いて検索しそのデータを元に癌部と癌周囲異型細胞との違いを検討,更にゲノムDNAの増幅ないし欠損の検索が胆汁細胞診等の微小な臨床検体で癌を診断する手法と成り得るかを検討することであった。胆管癌の凍結切除標本を用いてレーザーキャプチャーマイクロダイセクション法により癌組織中から約1万個の癌細胞のみを切り出しDNAを抽出した。このサンプルのDAN量がゲノムアレイを施行するのに十分であるかを検討するため,濃度が既知のDNAサンプル(血液から抽出)を用いて特定遺伝子(p53)のgenomic DNA配列に対するリアルタイムPCRを行い比較したところ予想より収量が少なく(20pg以下),アレイを行なうのに不十分であった。追加の切除を検討したがマイクロダイセクション装置のレーザーが消耗し,使用不能であったため施行できなかった。このため,胆管癌細胞株を順次入手しゲノムアレイを施行中である。今後,細胞株のゲノムアレイで得られたデータより頻度の高い染色体異常を抽出し,癌組織から抽出したDNAでその染色体異常の有無を確認する予定である。胆管癌細胞株においては胆管癌の標準治療であるgemcitabineに対する抗癌剤感受性試験を実施しており,染色体異常とgemcitabine感受性の関連を検討する予定である。また,昨年作成した胆管癌切除標本のティッシュプロットを用いた免疫染色で「HLA蛋白質発現の検討」と「SonicHedgehog (SHH)蛋白質発現の検討」を行った。その結果,胆管癌ではHLA-classIの発現が高頻度に保たれており,細胞性免疫反応の可能性がある一方でHLA-Gも高発現しており,癌細胞が免疫系からの攻撃を回避している可能性が示唆された。また,SHH発現の検討では胆管癌発生の初期の段階でSHHの関与の可能性が示唆された。
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