研究概要 |
【背景と目的】膵粘液性嚢胞腫瘍(Pancreatic Mucinous Cystic Tumors, MCT(P))と卵巣粘液性嚢胞腫瘍(Ovarian Mucinous Cystic Tumors, MCT(O))には何らかの共通点の存在が推測されるが、両者を比較検討した報告は少ない。今回我々は種々の抗体の発現を用い免疫組織学的に両腫瘍を比較し、その発生や進展における各抗体の役割を検討した。 【対象と方法】切除例MCT(P)8例(腺腫6例、腺癌2例)、MCT(O)21例(腺腫11例、境界病変8例、腺癌2例)が対象。パラフィン包埋切片を用い、細胞周期制御因子(p27/kip1, pRb),性腺関連マーカー(ER, PgR, inhibin-α),膵胆道系マーカー(CA19-9, DUPAN2)の発現を腫瘍細胞,間質細胞に分け、免疫組織化学的に検討した。浸潤性膵管癌(Invasive ductal cell carcinoma of the pancreas, DC)女性例7例、正常膵女性例8例、正常卵巣10例においても同様の検討を行った。 【結果】腫瘍細胞においてMCT(P)とMCT(O)はp27/kip1とDUPAN2において、いずれもDCより有意に染色陽性率が高かった。一方、MCT(P)とMCT(O)との間にはいずれの抗体においても有意差を認めなかった。また、腫瘍細胞においてMCT(P)浸潤癌とMCT(O)の腺癌2例はp27/kip1に陰性であった。間質細胞ではp27/kip1, ER, PgR, inhibin-αにおいてMCT(P)とMCT(O)はいずれもDCより有意に染色陽性率が高かった。一方、MCT(P)とMCT(O)との間にはいずれの抗体においても有意差を認めなかった。 【結語】女性性腺ホルモンはMCT(O)と同様にMCT(P)においてもその発生において大きな役割を担っており、p27/kip1の欠乏は両腫瘍の進展に関与していることが示唆された。
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