研究概要 |
心臓血管手術における静脈グラフトの使用は、血管平滑筋細胞の増殖を主因とする内膜肥厚によるグラフト不全が遠隔期における最大の問題点である。今回我々はウサギ頸動脈バイパスモデルを用い、PD-ECGFによる内膜肥厚抑制効果について検討した。【方法】遺伝子を静脈グラフトに効率的に導入するためβ-gal遺伝子を組み込んだプラスミドベクターにPluronic gelとtrypsin(0,0.1,0.25,0.5%濃度;n=20)を混合後投与、7日目に摘出し、導入効率を検討した。次に最適なtrypsin濃度を用い、1)生食群(n=16)、2)β-ga1群(n=16)、3)PD-ECGF群(n=16)を短期群(14日)と長期群(56日)に分け、内膜肥厚抑制効果を検討した。【結果】trypsin濃度0.25%以上において有意に内膜肥厚部への導入効率の上昇を認めかつ炎症反応増強・内膜肥厚増強を認めなかったため。0.25%trypsinを使用し、内膜肥厚抑制効果を検討した。内膜肥厚は短期群(生食群72.5±12.6μm,β-gal群79.9±20.9μm,PD-ECGF群36.3±18.5μm)、長期群(生食群206.9±20.7μm,β-gal群203.1±36.6μm,PD-ECGF群98.1±27.9μm)とPD-ECGF群において有意(p<0.05)に内膜肥厚は抑制された。また短期群のPD-ECGF群において新生内膜肥厚部血管平滑筋細胞の増殖能の抑制が認められた。【結論】PD-ECGF遺伝子投与により内膜肥厚抑制効果を認めた。これはPD-ECGFが静脈グラフトの長期開存性の向上に寄与する可能性を示唆するものである
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