研究概要 |
免疫抑制剤や抗がん剤などの薬剤は、動脈の狭窄・閉塞の主たる原因である、平滑筋細胞など間葉系細胞の増殖や、それによる細胞外マトリクスの産生を妨げ、新生内膜肥厚の抑制を図ることで、狭窄抑制の治療効果があることがわかっている。本研究では、この理論を外科的血管吻合に応用し、血管吻合術後の狭窄や閉塞を予防する材料の開発を試みた。 1.ラット腹部大動脈吻合部狭窄モデルを作成 材料をA.モノフィラメントナイロン糸、B.絹糸、C.PTFE糸、吻合方法を、I.単結節吻合、II.連続吻合し、1,2,4,8週後の組織所見を検討し、モデルの評価を行った。総じて吻合部治癒機転は、迅速であった。B-II(絹糸-連続吻合)の吻合部狭窄を採用することとした。 2.薬剤溶出担体の開発 A.薬剤の検討 パクリタキセル、FK506(タクロリムス)、シロリムス(ラパマイシン)で、その特性を検討するとともに、細胞増殖抑制効果を検討した。ラット大動脈平滑筋細胞を用い、FK506は100ng/mlでは細胞が生存増殖することは出来ず、50ng/mlでは細胞増殖抑制効果を示した。 B.担体の検討 ゲル状担体:コラーゲンゲル、フィブリンゲル 生体吸収性高分子化合物:ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン ゲル状担体は、薬剤を維持することは出来なかった。 生体吸収性ポリマーには、これらの薬剤(パクリタキセル、FK506)は脂溶性のため溶媒とともに溶解でき、Control releaseの可能性が示唆された。 3.ラット腹部大動脈吻合部狭窄抑制試験 実際に、薬剤(FK506ククロリムス)溶出担体を吻合部に置き、抑制効果の有無を観察する実験を行った。Preliminaryな結果では非常に狭窄抑制に有効であることがわかった。 今後、薬剤濃度の最適化、至適control releaseのための担体の工夫など、検討が必要と判断できた。
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