研究概要 |
平成18年度は、視床前核の深部電気刺激を行うことで、キンドリングモデルラットの二次性全般化を行動学的、電気生理学的に抑制することができることを明らかにした。平成19年度は組織学的な対応を検討するために、まずカイニン酸モデルラットを作成し、BrdUを用いて海馬における神経新生を評価すると、異常な神経新生を確認することができた。次いでカイニン酸モデルラットに対して視床前核・海馬・脳表に電極を留置し、持続的な脳深部電気刺激を施行したところ、平成18年度同様、視床前核の電気刺激によって著明な治療効果を認めたが、免疫組織化学的には、海馬の異常神経新生が抑制されていることが明らかとなった。さらに、海馬の異常神経新生がてんかん原生について与える影響については未だ明らかではないため,脳由来神経栄養因子(BDNF)やエリスロポイエチン(EPO)を用いて海馬の神経新生を賦活化した後,カイニン酸投与によりけいれんを誘発した。BDNFやEPOの少量投与群では行動学的・電気生理学的にけいれんが抑制され、海馬の異常神経新生も抑制された。それに対して、EPO過剰投与により神経新生が急速に促進された群においてはけいれんの行動学的悪化を認めた。本年度の研究結果により、てんかんへの脳深部電気刺激臨床応用する際,神経新生に対する影響を十分に評価しなくてはいけないと考えられた。
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