研究概要 |
難治性疾患として知られる悪性グリオーマの新しい免疫療法を開発することを最終的な目的とする。これまでは欧米人に多いハプロタイプであるHuman Leukocyte Antigen(HLA)のA2に関する報告が多数であり,こちらを継続する一方,さらに我々は日本人の60%以上を占めるHLA-A24に対する研究も行った。そのために既知のグリオーマの腫瘍抗原に対する免疫の誘導(特に細胞障害性T細胞(以下CTL)の誘導)を行うことのできるペプチドの開発を行った。HLA-A24陽性の健常人由来の血液を用いてスクリーニングを行い,2種類のtumor antigenからCTLを誘導しうる3種類のペプチドを同定した。これらのCTLは,抗原特異的なIFN-γの産生能を有し,HLA-A24拘束性にグリオーマ細胞株に対する細胞障害性を有することも示された。これらのペプチドは,HLA-A24が多い日本人患者のグリオーマの免疫療法に応用への可能性があると考えられる。この抗原は,グリオーマ以外のがんでも発現していることが確認されたため,脳腫瘍以外へも応用可能と考えられる。さらに,この腫瘍特異的CTLを検出するtetramerの開発も同時に行った。このtetramerは,将来免疫療法を行った際の治療効果を判定するためのsurrogate markerとして使用できると考えられる。一方,野生型ペプチドを改変しさらに強力なCTLを誘導できる改変型ペプチドの開発も試みたが,腫瘍細胞への細胞障害性が野生型ペプチドに比してそれほど強いものを得ることはできなかった。こちらについては,今後改変の方法について改善の余地があると考えられる。
|