研究概要 |
本研究の目的は,軽度体温変化による脳微小血管反応性の変化を観察し,その機序としてカリウムチャネル活性と一酸化窒素の関与を明らかにすることであるが,一方,高濃度ブドウ糖も一酸化窒素合成酵素を介する血管拡張反応を抑制するとされている。プロポフォールはフリーラジカル消去作用を持つと報告されているが,臨床濃度のプロポフォールが高濃度ブドウ糖により抑制された脳血管拡張反応を改善するかは明らかでない。そこで,ラット脳微小血管を用い,高濃度ブドウ糖が一酸化窒素合成酵素を介する血管拡張反応を抑制するか,またこの抑制された拡張反応がプロポフォールのフリーラジカル消去作用により回復するか否かを検討した。結果,アセチルコリンは脳細動脈を拡張させ,L-NAMEで完全に抑制された。D-ブドウ糖(20mM)はこれらの拡張反応を抑制したが,L-ブドウ糖(20mM)は影響しなかった。TEMPOおよびプロポフォール処置血管ではD-ブドウ糖(20mM)で抑制された拡張反応をほぼ完全に回復した。TEMPOとプロポフォールによる相加的効果は認めなかった。高濃度ブドウ糖は,一酸化窒素合成酵素を介する脳実質内細動脈拡張反応を抑制し,臨床使用濃度内のプロポフォールはフリーラジカル消去作用によりこの抑制された血管拡張反応を回復させると結論付けられる。
|