研究概要 |
目的:これまでの報告がら,加齢や動脈硬化に伴う慢性的な膀胱虚血は,排尿筋過活動を呈し過活動膀胱の発生に重要な役割を果たすことが示唆されている。そこで,ラット大腿動脈から血栓除去用バルーンカテーテルを両側総腸骨動脈に挿入し,内膜を損傷した後,高カロリー食を飼料として8週間与え動脈内腔の狭小化および排尿動態の変化を以下の方法を用いて検討した。 対象動物:Sprague-Dawley系ラット500g 実験群: コントロール群10例 食事はregular diet 8週間。 腸骨動脈内膜損傷群10例 両鼠径部切開,大腿動脈より総腸骨動脈に紳経のballoon catheterを挿入し,血管内膜損傷を形成する。食事は2%cholesterol diet 8週間。 Sham群10例 両鼠径部切開のみ施行し,食事は2%cholesterol diet 8週間。 実験系: (1)代謝ゲージにて,ラットの24時間排尿記録を作成。 (2)血液を採取し,血糖,トリグリセリド,HDL-コレステロール,総コレステロール値の測定。 (3)無麻酔非拘束下膀胱内圧測定(CMG)。 (3)摘出した腸骨動脈および膀胱の組織学的検討。 結果: 総コレステロール値は,sham群とAI群で有意に高値を示した。代謝ゲージにおける平均一回排尿量は,コントロール群1.31ml,sham群1.15ml,AI群0.87mlとAI群で有意に減少した.CMGでも,同様に.AI群で,平均膀胱容量の有意な減少を認めた。いずれの群でも残尿を認めなかった。組織学的検討では,AI群の総腸骨動脈にのみ内膜の肥厚を認めた。AI群の膀胱では,間質への線維芽細胞の増生と微小血管の壁肥厚に伴う内腔の狭小化を認めた。 考案: 特発性過活動膀胱の発生メカニズムに,動脈硬化による慢性的な膀胱血流の低下の関与が示唆された。
|