研究概要 |
本年における研究実施状況と得られた結果は以下の通りであった. 1.正常および妊娠高血圧腎症(preeclampsia:PE)や妊娠高血圧、(PIH)におけるオートファジー遺伝子APG9L1とAPG9L2の胎盤発現の検討 APG9L1, APG9L2, NOS3の発現パターンを正常胎盤とPEおよびPIH胎盤で比較する為に胎盤絨毛を147検体収集.その内,正常69例,PE14検体,PIH12検体に関して定量RTPCR法で各遺伝子の発現量の比較を行った.まず正常検体でAPG9L1, APG9L2, NOS3の発現量の変化を検討した.各遺伝子の発現量は自然陣痛の有無で比較したところ自然陣痛有の群で有意に上昇し,週数による増減傾向を認めなかった.次にPEおよびPIHに関し検討した.週数による増減傾向が無いのは正常検体と同様であったが,PEの自然陣痛なし群でAPG9L1, APG9L2の発現量の上昇を認めた. 2.正常およびPEにおけるオートファジー活性の検討 正常胎盤とPE胎盤におけるオートファジー活性を比較するため上記の検体を使用し抗LC3抗体を用いたウェスタンブロットを行ったが現在のところ明らかな相関は確認出来ていない. 3.PEモデルマウスを用いたPEとオートファジーの関わりについての検索. PEモデルマウス(p57KOマウス)とWTマウスより各妊娠段階における胎盤を収集した.定量RTPCR法でAPG9L1, APG9L2, NOS3の発現パターンを比較した.APG9L1, NOS3では発現量に増減を認めなかったが,APG9L2のみ妊娠後期に発現量の上昇を認めた.PEモデルマウスとWTマウスの発現量パターンの比較では差を認めなかった. 上記の結果よりオートファジー自体の役割の解明までは迫れなかったものの新規オートファジー遺伝子が陣痛発来やPEにおいて重要な役割を果たしている可能性について重要な知見が得られた.
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