研究概要 |
肺サーファクタント製剤(サーファクテン[○!R];田辺三菱製薬株式会社)とヒト胎脂を用いて作成したサーファクテン・ミセル溶液が、どのような機序でウサギ胎仔の小腸絨毛を成熟させるのかを検討するために、二重蛍光標識モデルを作成した。 元来、血球系のラベルとして開発された蛍光色素のPKH26(Sigma-Aldrich Co.)は、リン脂質二重層の外側表面に付着する(Horan, et. al. 1989)。したがって、PKH26をEmpty Liposome(COATSOME EL;日本油脂株式会社)に添加すると、蛍光標識されたLiposomeが出来上がる。さらに、胎脂に含まれる代表的な飽和脂肪酸であるパルミチン酸にBODIPY標識を施した4,4-difluoro-5,7-dimethyl-4-bora-3a,4a-diaza-s-indacene-3-hexadecanoic acid (BODIPY FL C_16; Invitrogen Co.)を加えて、転倒攪拌すると、BODIPY FL C_16を封入したPKH26標識Liposomeが完成した。 調整過程の各段階で電子顕微鏡観察(ネガティブ染色)を行い、粒子径と粒子形態を観察した。粒子径は100-250nmとなり、サーファクテン・ミセル溶液の蛍光標識モデルとして利用可能と思われた。 前年度に行なったAnti-Surfactant Protein B polyclonal antibody (AB3780; CHEMICON International, Inc.)を用いた免疫組織化学的検討によると、サーファクテン・ミセル溶液は、小腸絨毛に対して、局所的・直接的に作用している可能性が高い。 今後、ここで作成した二重蛍光標識モデルを、ウサギ羊水腔内に持続投与する実験を行う予定である。
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