研究概要 |
ERE配列に接続したルシフェラーゼ遺伝子をアデノウイルスベクターを用いて遺伝子導入し,その発現を指標としたエストロジェンの転写活性化能が,プロラクチン細胞においてドーパミンD2受容体刺激特異的に抑制されることを確認し,そのメカニズムを検討した。 パーコール密度勾配遠心分離法により得られた75%濃縮プロラクチン細胞集団において,ブロモクリプチンによりルシフェラーゼ遺伝子発現が抑制されることを確認した。またこのルシフェラーゼ遺伝子発現が,エストロジェン受容体アンタゴニストであるICI182,780投与により用量依存性に抑制された。このエストロジェンの転写活性化能は,ブロモクリプチンの内因性アゴニストであるドーパミンによっても抑制された。このブロモクリプチンの抑制作用は,ドーパミンD2受容体アンタゴニストの投与により用量依存的に回復し,ドーパミンD1受容体アゴニストを投与した場合にはブロモクリプチンの作用は再現されなかった。またこのようなエストロジェンの転写活性化能に対するドーパミンの抑制作用は,細胞株GH4ZR7では認められなかった。 1,ウエスタンブロッティング法及び,Quantitative RT-PCR法により,ブロモクリプチン投与におけるエストロジェン受容体αの発現量の減少が認められなかったことから,ドーパミン刺激によるエストロジェンの転写活性化能抑制作用は,エストロジェン受容体αの発現量減少に基づくものではないことが確認された。 2,フォルスコリンの投与により,ブロモクリプチンによる抑制作用は部分的に回復したが,完全には回復しなかった。またブロモクリプチンの抑制作用はPKAインヒビターの投与により再現されることは確認できず,ドーパミンの作用がcAMP抑制を介した経路をとる可能性は低いと考えられた。
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