研究概要 |
妊娠高血圧腎症(PE)では,血管内皮機能異常が存在し,それはNOの反応性異常を特徴とする。我々は,PEモデル動物としてニトログリセリン慢性投与による内皮機能障害動物にて,血管局所の活性酸素の産生がその障害を発症していることを明らかにした。 妊婦より得た大網抵抗血管での活性酸素種の関与を明らかにすることを目的とした。また,PEの病態が子宮らせん動脈の導管形成の失敗による胎盤循環不全によるendothelial cell activation(ECA)と考えられているので,胎盤局所での活性酸素種の産生を検討した。活性酸素種はスーパーオキシドとして8ヒドロキシデオキシグアニン(8OHDG),peroxynitriteをnitrotyrosine(NT)にて測定した。大網抵抗血管標本では,重症PE患者と正常妊婦の全症例で,内皮,中膜,外膜にNTの局在を認めた。ウエスタンブロット法によるNT定量でも両者に差を認めなかった。8OHDGも同様であった。重症型PE患者胎盤においてNTは,シトトロホブラストならびにインターメデュエイトトロホブラストにNTの強い局在を認めた(70%)。軽症型PE患者では強い局在を認めるものは少なく(25%),正常妊婦では局在を認めなかった(0%)。以上の検討によりPE血管の病態形成に活性酸素種が何らかの関与をしていることが示唆された。一方,重症PE患者の胎盤は母体絨毛間腔や母体面に接する部位で活性酸素種の関与が明らかとなった。しかし,PE患者において母体血管壁と胎盤peroxynitriteとindependentに産生調節されており,ECA発生の機序が単純でないことが示唆された。
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