研究概要 |
前庭神経節細胞の電気生理学的研究はこれまで主にin vivoで行われており、in vitroでの解析は少なかったが、2001年のChabbertの報告以来、細胞レベルでの生理学的特性の解析がすすんでいる。申請者らは、前庭神経節細胞自体がheterogeneousな発火特性を持つことを解明し(単発性の発火を示す細胞と連続発火を示す細胞)、heterogeneousな発火特性を制御しているイオンチャネルをパッチクランプ法を用いて同定した(DTX-α感受性の電流)。またこの発火特性が発達(PD7,PD14,PD21)によって変化することを示し、申請者は2007年5月に日本耳鼻咽喉科学会(金沢)で報告を行った(PD7では、一定の電流注入に対し、単発性の発火を示す細胞が多くを占めたが、PD14,PD21では連続発火を示す細胞の割合が増えた)。現在、欧文誌に成果報告を投稿中である。さらに神経栄養因子(特にBDNF)が発火特性に影響を与えるか否かについて、ノックアウトマウスを使用した解析をすすめ、heterogeneousな発火特性の変化を観察し、その成果を2008年5月の日本耳鼻咽喉科学会(大阪)で報告予定である。これらの研究より、in vivoで観察されるregularな発火とirregularな発火の挙動が前庭ニューロンの膜特性に対応するか検討をすすめており、またヒトで臨床応用されている前庭誘発筋電位(VEMP)のモデル動物に対するin vivoでの応用をすすめている。ヒトでみられるめまい疾患や平衡機能を考える上で重要な基礎データになると考えている。
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