研究概要 |
ラット内耳由来のESTライブラリーを使用して内耳に発現する電位依存方カルシウムチャネルの遺伝子のスクリーニングを行った。その結果,既存の遺伝子に加え,内耳での発現が知られていないT型カルシウムチャネルのひとつであるCaV3.1の遺伝子の発現が見られた。次にT型に属するCaV3.1,3.2,3.3に対するプライマーを作成し,コルチ器より抽出したmRNAを用いて,RT-PCR法を用いてラットコルチ器での発現を検討したところCaV3.1のmRNAのみが検出できた。In situ hybridization法を用いて,mRNAの局在を検討したところ,内外有毛細胞に発現が見られた。タンパクレベルでの発現を確認するため、Western blottingで内耳におけるタンパクの発現を検討したところ,抗CaV3.1抗体にて既知の小脳型CaV3.1よりやや分子量の小さい,内耳型CaV3.1と考えられるバンドを検出した。免疫組織化学法を用いて,内耳におけるタンパクの局在を検討したところ,外有毛細胞にのみ,CaV3.1タンパクの発現が見られ,内有毛細胞には見られなかった。この特徴はラットでは一過性の内向きカルシウム電流が外有毛細胞のみで観察され,内有毛細胞では観察されないという事実とよく符合するものと考えられた。この一過性内向き電流がT型の特性を有しているかどうかを検討するため,パッチクランプ法による検討を行った。一過性内向き電流は,holding potentialによる影響をうけ消失することから,低電位活性型の性質を持っていると考えられた。また,T型特異的阻害薬である低濃度mibefradilにより,可逆的に阻害できたことからもT型の性質を持っていると考えられた。 以上の検討から,ラット外有毛細胞における一過性内向き電流はT型カルシウムチャネルを介する電流と考えられた。今後はin vivoでのカルシウムチャネルの役割について検討していきたい。
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