研究概要 |
(はじめに)現在,2歳以下の幼小児において肺炎球菌感染症に対する有効なワクチンはわが国では導入されていない。今回,マウスモデルを用いて母体経鼻免疫による仔マウスへの肺炎球菌特異的抗体の誘導と肺炎球菌感染予防について検討を行った。 (方法)BALB/cマウス(4週齢,雌)にPspAをコレラトキシンBをアジュバンドとして経鼻免疫を行った後に,交配し仔マウスを得た。仔マウスが生まれた直後に免疫母マウスと非免疫母マウスを交換し,次の4群で子マウスを発育させた。A群:免疫母マウスー免疫母マウス由来子マウス,B群:免疫母マウスー非免疫母マウス由来仔マウス,C群:非免疫母マウス-免疫母マウス由来仔マウス,D群:非免疫母マウス-非免疫母マウス由来仔マウス。この4群にて(1)PspA母体経鼻免疫による肺炎球菌特異的抗体の誘導,(2)PspA母体経鼻免疫によるマウス鼻腔への肺炎球菌定着の予防,(3)PsaA母体経鼻免疫によるマウス肺炎球菌全身感染の予防について検討した。 (結果)(1)PspA経鼻免疫により,母マウス血中,母乳中に抗PspA特異的IgG抗体,IgA抗体が誘導された。A群,B群では仔マウスの血清中に抗PspA特異的IgG抗体の上昇が見られたが,C群,D群では低いレベルであった。(2)A群とD群を比較するとA群において有意に肺炎球菌の定着が抑制された。B群でも肺炎球菌の定着抑制が見られたが,C群では見られなかった。(3)D群と比較して,A群,B群,C群にて肺炎球菌全身感染症による生存期間の延長が見られた。 (考察)以上のことから,PspAを用いた母体免疫を行うと,母体血清中および母乳中に抗PspA特異的IgG抗体,IgA抗体が誘導されこれらが,経胎盤,経母乳により仔へ移行したと考えられた。また,肺炎球菌定着の減少,肺炎球菌全身感染症による生存期間の延長が見られたこのから効果的な予防方法となると考えられた。
|