研究概要 |
発生中のラット網膜におけるタイトジャンクションを構成するタンパク質と水イオンチャネルタンパク質であるアクアポリン(AQP)の相互作用を調べるため,Sprague-Dawley(SD)系ラットを交配し,胎仔および新生仔を得た。成体としては8週齢のラットを使用した。採取した眼球組織から凍結切片を作製し,各種抗体を用いて免疫染色を行った。 ZO-1は、胎生期には外顆粒層および内顆粒層に点状に局在し,発生が進んで網膜細胞が増えるにつれ陽性反応も増加した。また,未分化な視細胞外節にも強い反応が見られた。Occldin-1の陽性反応は網膜細胞の分化が始まっていない胎生16日目では網膜全層に点状に局在していた。胎生18日目に外顆粒層と内顆粒層が形成されると、内顆粒層でより強い反応が見られるようになった。しかし,ZO-1で見られたような,視細胞外節部位の反応は観察されなかった。 AQP-1は,眼杯唇部でのみ非常に強い反応が見られ,細胞の周囲を縁取るように局在していた。発生が進み,眼杯唇部から毛様体が形成され始めると反応は更に強くなり,出生後は毛様体上皮細胞に極めて強い反応が見られたが、神経網膜内には反応は観察されなかった。AQP-4は胎生期および新生仔期の網膜では観察されなかった。成体の網膜では、AQP-1は外顆粒層の視細胞周囲を縁取るように局在しており、また,AQP-4は主にミュラー細胞に局在していた。網膜内でのAQPの発現は,各細胞が分化して特徴的な機能を持つようになって以降の事であることが明らかとなった。 網膜細胞の分化が生じる段階から発現していたZO-1とOccludin-1は,発生段階の網膜のホメオスタシス維持において主要な役割を担っている可能性があると考えられたが、AQPと異なる部位に局在しており、網膜のホメオスタシス維持という点においては各々独立した機構を構築していると考えられた。
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