研究概要 |
網膜内でフリーラジカルスカベンジャーとして機能している銅・亜鉛依存型superoxide dismutaseSOD1)のノックアウトマウスが、加齢によりdrusen,ブルッフ膜の肥厚、脈絡膜新生血管を生じることを報告した。われわれの報告したSod1-/-マウスは光学顕微鏡レベルでdrusen, CNVという代表的な所見を呈することが特徴で、現時点で優れた動物モデルと考えられる。さらにSod1-/-マウスがAMDの諸病変を模倣することは、AMDの発症に酸化ストレスが原因として関与することを強く示唆している。 AMDは重篤な視力低下をきたす疾患であるが、その進行型の臨床像は、網膜変性を主体とする地図状萎縮と脈絡膜新生血管(CNV)を主病変とする惨出型に分類される。 これまで何がこの2つの病理像を決定しているのかは明らかでなかった。 CNVに対しては光線力学療法、抗血管新生因子療法が行われてきた。しかしながら地図状萎縮を呈する網膜変性に対しては有効な治療はなかった。われわれは、SOD1ノックアウトマウスの網膜機能の評価を行い、本マウスが加齢依存的に網膜の機能低下をきたすことを網膜電図を用いて証明した。(AM J Pathol in press, 2008)この結果は酸化ストレスの完進が、脈絡膜新生血管の発生のみならず、網膜変性をきたすことも証明した。さらに本研究で、進行型AMDの2つの表現型(地図状萎縮と脈絡膜新生血管)が遺伝学的に同一であることが示された。現在、視細胞死を主病変とする網膜変性に有効な治療は少なく、1部のグループで抗酸化剤の大量静脈注射が試みられている。われわれの研究結果は網膜変性への抗酸化剤の投与に理論的な裏づけを与えたと考えられる。
|