研究概要 |
多指症や顎顔面形成異常には、初期発生における発生領域遺伝子の過剰性や抑制が最近知られるようになりました。特に、指領域分化においてはShhが直接支配する指芽、拇指からの指列を決定する線である前後軸において、Shh支配下のHox-DとHox-A、Hox-A直接誘導がおりなす複雑な指骨形成機序により多種の多指症の発症が知られています。しかし、Shh直接支配であるHox-D遺伝子以外のHox-A,Hox-Cなどへの分化への影響は、まだ未知数な部分が多いと思われています。 また、四肢先天異常症発症においては顔面骨形成不全を伴うことも少なくありません。 そこで、我々は以前よりこのShh遺伝子やHox遺伝子に着目し、我々が確立した遺伝子導入技術であるエレクトロポレーション法を用いることによって、この多指症発症やそれに伴った顎顔面欠損や変性、神経疾患のメカニズムを解明しようと試みました。今回は、未だに上(前)肢の肢芽形態形成、顎顔面形成、神経変異がはっきりしていないHox-C6、Hox-C9およびHox-Aの発生における変異と形成について、比較的遺伝子レベルでの発現機序が解明されているShhと比較を前提に検索しました。Hox-C6、Hox-C9およびHox-A6遺伝子を導入し、これによる遺伝子過剰発現を観察し、それぞれに対する異常症発現の可能性について検索しました。 その結果Shh,Hox-C6,Hox-C9,Hox-A6を胎児に過剰発現させることにより、上腕部や顎顔面領域の発生に関する知見を得ました。 ShhやHox-C9導入例では、上顎部組織と上腕/肩甲部の骨異形成が、また、Hox-A6では特異的な神経系の所見が観察されました。 以上から、Shhは他のHox群を介した異形成を生じるのに対し、Hox-C9ではHox-C9/Hox-C6相互関連である異形成が生じていることが示唆されました。
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