研究概要 |
本研究は,健常者の歯肉溝や歯周病患者の病巣局所より高頻度に検出されるグラム陰性紡錘状細菌であるFusobacterium nucleatum細胞壁外膜に存在するリピドAを分離・精製し,その化学構造および宿主(細胞)に対する作用機構について明らかにしようとするものである. 本年度は以下の結果が得られた.1.F.nucleatum subsp.nucleatum ATCC 25586^Tを,ヘミンおよびメナジオンを添加したGAM培地を用いて大量培養し,遠心操作により菌体を得た.2.同菌体を凍結乾燥後,温水・フェノール法によりリボ多糖(LPS)画分を粗抽出し,タンパク分解酵素や核酸分解酵素にて処理した.3.同LPS画分を酢酸により加水分解し,その活性中心であるリピドA画分を切出し後,疎水性相互作用,イオン交換およびゲル濾過などの各種クロマトグラフィーを用いて単離・精製した.4.リピドAの化学構造をMSスペクトラムにより解析した結果,リピドAの分子量は1949.2と1978.3が2:1の割合で存在していることが明らかとなった.分子量1949.2のメインピークをMS-MSスペクトラムにより解析した結果,1位,4'位にリン酸基をもつβ(1-6)グルコサミンジサッカリド骨格の2,3位に炭素数14の3-ヒドロキシルアシル基,2',3'位に炭素数14と16のアシルオキシアシル基を含む6本鎖の直鎖脂肪酸をもっリピドAであることが明らかとなった.他方,分子量19783のリピドAは,炭素数14の脂肪酸のいずれかが炭素数16に置換したものと推測される.現在,得られたLPS/リピドAの内毒素活性および宿主細胞活性化機構について検討を進めている.
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